カイロプラクティックの頭蓋骨矯正は、症状の改善にどのような効果があるのか？
腰痛や肩こりで来院された患者様の頭蓋骨の矯正を行っていると、「それは何をしているんですか？」と質問を受けることがよくあります。確かに腰が痛いのに頭を触る理由というのは解りにくいと思いますので、カイロプラクティックの頭蓋骨矯正を、症状の改善例をもとに説明をしてみたいと思います。
頭蓋骨矯正には様々なものがあります。多くのものは頭蓋骨への軽い接触により、患者様の呼吸の動きに合わせて矯正するもので、患者様にとっては大変心地よく、眠ってしまう方もいらっしゃいます。一方で多少の忍耐力が必要なものもあります。アメリカでのセミナーで顎関節のクラスに出席した時に、カナダとシカゴから見えた共に１９０センチくらいの大男の先生たちと一緒にテクニックの練習をしました。この時の顎関節の矯正は２人がかりで１人の患者さんを矯正するというものでしたが、患者さん役になった私（１７０センチ）は「顎が取れるのではないか！？」と思うほどの衝撃を伴う矯正を、大男の先生たちから受けました。結果としてはもともと顎（特に右顎）があまり良くない私にとって、ビックリするくらい顎の調子が良くなりました。
このように、頭蓋骨矯正には心地よい接触によるものから強い接触によるものまでいろいろありますが、心地良いからと言って単に癒しを目的としている訳ではありませんし、私がアメリカで受けたような強い接触でも、きちんとした検査の基に行えば暴力的なものでもありません。頭蓋骨矯正は、段階的に検査を行うことで、この患者様には頭蓋骨矯正が必要か否かという指針がありますので、皆様特有のからだの状態によって様々な方法があります。
６０代の女性の患者様で腰痛を訴える方がいらっしゃいました。状態としては、とても痛くてしょうがないという程ではありませんが、仕事で長い時間パソコンと向き合っていると、次第に腰が重くなり立ち上がるととても不安定な感じがするとのことでした。
この患者様の腰痛は色々と検査をしてみると、頭蓋骨のバランスの崩れの矯正が優先順位として現れてきました。
立位での検査は全体的にやや左に傾いた姿勢で、困難な動作はからだの前屈でした。左足に体重を乗せた状態では、水平に９０度持ち上げて頂いた両腕の筋力は低下しますが、右足に体重を乗せた状態では弱化しません。これは、左の骨盤に問題があるかも知れないことを示唆します。
仰向けで両膝を伸ばして両足を同時に持ち上げて頂くと、腰に痛みが若干あり力の入りづらい状態で、頭を骨盤方向に押した状態で同じことをして頂くと、更に力が入りづらくなります。これも骨盤に問題があることを示唆する検査結果です。また、骨盤の安定性に関与する筋肉は、全て左側で弱いという結果でした。
同じ検査を両方の奥歯にコットンロールを当て、強く噛んだ状態で行います。噛んだ状態ですと、頭を骨盤の方に押さない状態でも押した状態でも力がしっかり入ります。これは、歯の噛み合わせのバランスを安定させることで、頭蓋骨が安定する方向に変化して脳自体のバランスが安定することで、運動神経と感覚神経に影響があることを示唆します。立位での検査もコットンロールを噛んだ状態では両腕の筋力の弱化は見られず、前屈の動作は噛む前と比較するとスムースに行えます。。骨盤の安定性に関与する筋肉もコットンロールを噛んだ状態では強くなります。これはまず、優先順位として頭蓋骨のバランスを安定させる矯正を行った方が良いという指針になります。
次に頭蓋骨のバランスを見る検査を行います。触診により全体象の状態の確認と各頭蓋骨で動きの状態を観察します。そして頭蓋骨のバランスの良い方向と悪いの方向に負荷かけて様々な筋力を検査して、頭蓋骨による神経的な影響を観察します。双方の観察の結果が一致している部分が頭蓋骨矯正の対象となってきます。
こちらの患者様は蝶形骨と上顎骨のバランスが崩れており、特に左側が顕著でした。欧米ではこのような場合、口の中から骨に接触して呼吸とともに一度の矯正で行うのですが、当院では少し手間がかかりますが、顔や頭の表面から３行程に分けて行う方法をとっています。
この頭蓋骨矯正を行うと、両足を持ち上げる検査では、頭を骨盤方向へ押さない状態でも押した状態での力は入り易い状態に変化し、立位での姿勢は安定し、左足に体重をかけた状態での筋力の弱化も見られなくなり、前屈は容易に行えました。これは頭蓋骨の矯正が、からだ全体の骨格的バランスと神経的バランスに影響を与え、骨盤に問題があると考えられる検査結果を変化させたということになります。
このように頭蓋骨の矯正は、検査を綿密に行うことで皆様のお持ちの症状を改善させるための重要な手段の１部となります。頭蓋骨矯正は脳というからだの統合器官に影響をあたえるために、上記の例のような腰痛のみならず、様々な症状の方に有効であると考えられ、腰痛のような症状でも頭蓋骨矯正が改善の手段の１つであるように、カイロプラクティックでは症状のある場所だけに留まらず、からだ全体を広く観察することが特徴であります。
