こちらのページをご覧になって頂いている皆様は、からだに何らかの問題を抱え、それを解決するためにカイロプラクティックについて知りたいと思っておられると考えております。私は初めてお見えになる患者様には、問診時に簡単にカイロプラクティックについて説明をさせて頂いておりますが、説明不足なところが多く、お伝え出来ない部分が多々あります。
実際に患者様が新患様を紹介して下さる際に、「カイロプラクティックってどういうことをするの?」と御家族や御友人に聞かれて「・・・???」と、何と答えて良いか困ったというお話をよく耳にします。
そこで、このページでは分かりづらい専門用語は極力排除して、私的な見解が主となりますが、分かり易くご説明できればと思っております。
症状が発生する要因と耐性について
さて皆様が我々の矯正について興味をお持ちであることは、何かしらの身体問題をお持ちであるか、健康維持のために何か良い手段はないかとのお考えをお持ちであるからであると考えています。
我々が皆様の様々な症状の改善や健康状態の向上のために、まず第一として考えることは、皆様が現在お持ちである身体の「耐性」であると思います。
耐性とは皆様の身体にかかる様々な負荷に対して耐えることができ、症状を発症せずに健康状態を維持するための力です。耐性を高いレベルで保つために必要な要素として主に骨格、自律神経、休息、栄養そして先天的な体質が挙げられます。この耐性という言葉は免疫力とも言えると思います。
逆に耐性を減少させる要素として、疲労、睡眠不足、栄養、外傷、生活環境、気候、重力、化学物質、細菌やウィルスなど身体にインパクトを与える一定以上の過剰な負荷になります。この負荷の積み重ねに対して骨格や自律神経の耐性が減少し休息や栄養により回復できる状態でなくなり、耐性の限界を超える発火点に達すると、皆様が感じる様々な痛みや身体の不調、そして病気が症状となって現れます。
例えば腰痛になってしまった場合には、今までに腰痛になるべくして身体にかかる負荷の蓄積があり、骨格が不安定ながらも症状を抑制している時期が過ぎ、耐性の減少が腰痛を発生する発火点に達すると症状となって現れます。長い年月を経てじわじわと腰痛が悪化した場合でも、急にギックリ腰になってしまった場合でも発症のプロセスは同じであり、負荷の強度と耐性の減少の速度の違いであると考えています。
病気の場合においても同様のことが言えます。近年の研究では我々の身体の中では1日に5000個以上のがん細胞が発生していると考えられています。身体の中でがん細胞に対する耐性、つまり免疫細胞が活性的に働く環境があれば、免疫細胞ががん細胞を抑制して健康状態を維持します。しかし免疫細胞が活性的に働かない体内環境、つまり耐性が減少している場合にはがん細胞は増殖は進行していきます。進行中は無症候の期間が存在しますが、症状を発する発火点に達すると、自覚的な症状として現れます。この免疫力には自律神経の安定性が重要になります。
骨格と自律神経の関係性
様々な症状が発生する要因と耐性について説明を致しましたが、では我々はどのような考えの元に矯正を行うのかについて説明したいと思います。
症状や病気の発生原因としては骨格と自律神経の耐性の減少になりますので、骨格の中で耐性を向上させる優先順位の高い箇所を様々な検査で検出して矯正を行っていきます。骨格の安定性の確保は耐性の維持にとって重要な要素である自律神経の安定性の確保にも繋がります。
自律神経は交感神経と副交感神経に分類され、主に不随意である内臓や免疫システムに影響する神経です。交感神経は身体を活動的に保ち、副交感神経は身体を休息状態に保ちます。交感神経と副交感神経がどちらにも過剰に偏ることなく、安定した状態で身体をコントロールできる状態において免疫細胞は活性的に働くことができます。
自律神経は主に背骨の中にある脊髄を出発点として、背骨の隙間を通過して目的の器官に達します。背骨の中の脊髄は髄膜という膜に覆われ、その髄膜の中を脊髄や自律神経を栄養する体液が循環しています。背骨が安定した状態を逸脱して捻じれ、動きが減少したり過剰に動き過ぎる状態になると、体液は圧力変動を起こし、この圧力変動は神経に対して耐性を減少させる負荷を与えて神経の機能は低下してしまいます。つまり骨格と自律神経は耐性を維持する重要な要素ですが、お互いに連動した関係性であるとこが解ります。
今から90年近く前にアメリカ合衆国のカイロプラクターが、内臓疾患を持つ患者に対し、その内臓に影響する自律神経の出発点となる脊髄レベルの背骨に、暖めるまたは冷やすという治療を行いました。暖めると患者の症状は悪化し冷やすことによって症状は回復に向かいました。これは温熱や冷却という刺激が自律神経に影響を及ぼし、刺激と抑制の効果がある事を示唆しています。その後の研究により温熱と冷却と同様に、特定臓器への自律神経に関与する背骨を一定方向に動かす事により、自律神経に対して刺激と抑制を行えることが次第に明らかになってきました。
このように我々カイロプラクティックは筋骨格に対して独立した分野で研究を行ってきた学問でありますが、単に筋骨格に対する安定を図るだけではなく、耐性を高め健康状態を向上させるために必要な自律神経の安定も図るという特殊性を兼ね揃えています。
矯正の優先順位の決定
我々の骨格に対する矯正の特殊性として、耐性の減少している場所を特定していく検査方法を数多く持っている所にあります。これにより矯正の優先順位を決定し円滑な回復を目指していきます。
例えばギックリ腰を発症した場合には、当然ですが腰や骨盤、そして足に痛みが起こり様々な動作が困難になります。しかしギックリ腰を発症するまでに耐性の減少が進行した部位により矯正部位は異なってきます。
腰が発症原因であり発症部位であれば、腰の矯正により耐性は向上するために経過は良好であると考えられます。しかし過度の疲労により内臓がとても疲れていて、自律神経のアンバランスが原因で骨格の歪みが生じた結果、ギックリ腰が発生した場合には、腰に対する矯正だけでは回復が滞る場合があります。この様な場合には症状も重要ですが、他の要素も多角的に分析する必要があり、腰に対する安定性を得るための緊急的な矯正とともに、特定の内臓に対する矯正を行うと耐性が向上し回復傾向に向かいます。
またギックリ腰になりやすい方が矯正を継続的に行い、身体の弱点を克服し耐性が高い状態を維持していくと、ギックリ腰に非常になりづらくなり、仮になったとしても高い耐性の状態に戻り易い身体であるために回復はかなり速いものとなります。
カイロプラクティックには皆様の身体の中にある矯正すべき優先順位を決定する、数多くの特殊な検査方法を兼ね備えていて、皆様の急所や弱点といった身体的特徴を把握することが第一であると考えています。
作家の星新一さんのショートショートの作品の中に、「重要な部分」という作品があります。あらすじとしては、平凡な青年の元に急所の研究家と名乗る老人が訪ねてきて、青年の勤めるごく普通の会社が社会の急所であり、仮に倒産すると、目立たぬ形で影響が方々におよび、ひろがり、気が付いた時には手遅れになり、社会がどうしようもなくなってしまうという旨を青年に告げます。青年はそういう話なら社長にするべきではないかと老人に質問しますが、老人はその会社の急所は社長ではなく青年自身であり、つまり社会全体の急所はこの青年であると答えます。青年は普段の勤務態度から、自分自身は会社では特に目立つこともなく、いてもいなくても変わらない存在であると考えていたのですが、目立たぬからこそ、もし青年に何かがあると、補充が遅れ、次第に会社のバランスが崩れ、最後には社会のバランスが崩れ国家の危機に繋がると老人から告げられ愕然とします。この作品は我々の学問的な見地からすると、言い得て妙と言えます。
重要な部分とは物語の中でのこの青年のように、皆様の骨格の中での急所とも言える部分あります。この骨格の急所がバランスの崩れの中心、つまり皆様に”ゆがみ”を発生させるで問題の中心となり、物語の中では国家にとっての危機に繋がるように、皆様にとっては痛みや不調という身体の危機に繋がります。
急所は弱点と同義であるとも考えられます。皆様の弱点は症状のある所かもしれませんし、実は症状とはあまり関係の無さそうな、青年のように目立たない所かもしれません。弱点は生まれつき弱い部分もありますし、皆様の長年の生活の積み重ねによって弱点となっていく部分もあります。カイロプラクティックの特徴は、皆様の現時点での筋骨格と神経系の優先順位の最も高い弱点を判断する方法と、それを矯正する手段を持っていることであると考えられます。
物語の中では、急所が安泰であれば社会や国家が円滑に働く力を生み出しますが、皆様のからだの中でも急所が安泰であれば、耐性が高い状態を維持し回復力を十分にに働く力を生み出します。
カイロプラクティックは皆様がお持ちの様々な症状を、出来るだけ速く回復に促すために、弱点から矯正していくという、言わば根本的な部分から改善していく手段であり、この手段が最終的には皆様がお持ちの回復力を最大限に発揮するための鍵であると考えています。
ここにご紹介した「重要な部分」という物語は、星新一さんらしい意外な結末が待っています。御興味のある方は是非読んでみて下さい。(新潮文庫 ”たくさんのタブー”に収録)
なぜ、からだはゆがむのか?
さてカイロプラクティックは皆様の”からだのゆがみ”を発生させる、からだの急所を矯正し、回復するための力を発揮させるための手段であることを説明しましたが、そもそも、なぜ急所は発生し、からだはゆがんで行くのでしょうか?からだのゆがみの原因には諸説ありますが、我々の見解からいくつかの原因について述べてみたいと思います。
1・胎児期の状態と出産過程によるもの
先ず、第1に皆様が胎児の時にどのような状態で母体の中で過ごし、どのような出産過程を経て誕生したかが影響すると思われます。
胎児期には、胎位、胎勢、胎向という、いわば胎児の母体の中でのポジションが重要になります。生物は自然界の法則に倣うものですが、人間の出産過程にも自然の法則に則った、理に適った過程があります。これは恐らく、胎児への負荷が最も少ない過程であると思われますが、やはり誕生という産まれる苦しみといわれるものがあるために、胎児にはそれ相応の負荷がかかります。この場では典型的な例をご紹介します。
これは出産間近の胎児と骨盤の状態を示す模式図です。上の画像は骨盤を正面から見たものですが、オーソドックスな状態として、胎児が頭を下にして、顔を右の骨盤の方へ向けています。これは胎児の頭の前後径が母体の骨盤の横径に一致した状態で、狭い母体内のスペースを有効利用しているように見えます。
角度を変えて右側からみるとこのような状態です。この後胎児は産道を通過するのですが、頭が通過しやすいように、後頭部を先頭にするために顎を引き、頭の前後径が産道の前後径に一致するように母体の骨盤側に顔を向けます。胎児の出産過程の回旋といわれる動作です。
上の画像では胎児は骨盤の中央にある仙骨という骨の方に顔を向けています。これは首を強く捻じった状態であり、胎児が産道を通過するまでこの体勢を維持するために、産道での強い圧迫をこの体勢で受け続けます。これは未熟な胎児のからだとって、ゆがみを発生させる強い負荷であると考えられます。
そして左の画像のように首を強く捻じった状態で産道を頭が通過すると、右の画像のように胎児は顔をからだの正面に向け、肩から下が出やすい状態を作り、無事に誕生となります。
さて、この一連の過程は典型的な出産過程の例ですが、皆様ご存じのように胎児の頭蓋骨はとても柔らかいものであり、その他のからだの作りもまだ未熟で不安定なものでありますので、スムーズな出産であっても、この様な圧迫は胎児のこれからのゆがみの方向性を決定するような影響を与えます。
このような出産過程を経た新生児は、上の画像のように首は左方向への捻じれが強く、下半身は右方向の捻じれが強いという捻じれの方向性、言い換えるとからだの全体像としての弱点の方向性をからだの基礎として持ち合わせていると考えられます。この基礎は大人になっても皆様のゆがみの方向性の基礎であることには変わりなく、皆様の現在のからだのゆがみは、この基礎をスタート地点として、今までにからだにかかった様々な負荷の歴史の積み重ねとして現れています。
出産過程には上記のような典型的なものばかりではありません。自然分娩に至らない場合は、胎児の胎位、胎勢、胎向はとても窮屈なものであり、強い圧迫を受け続けていることが想像できるために、より複雑なゆがみを持つことになるかも知れませんし、自然分娩の場合でも胎児と母体のバランスから、複雑なゆがみの基礎を持つかもしれません。
急所や弱点の発生には、このように産まれながらに発生する、言わば先天的なものが考えられ、遺伝的な体質なども、先天的な弱点の重要な要素であると思われます。
2・疲労によるもの
さて、急所や弱点の発生として、先天的なものについて述べましたが、後天的、つまり産まれた後に考えられる要素についてお伝えしたいと思います。
後天的なものとして先ず考えられるのは”疲労”であると考えられます。「なんだ疲労か!」と思われるかも知れませんが、疲労こそが皆様のからだをの弱点となり、ゆがみを作っていく大きな原因になっていきます。
この疲労と弱点、ゆがみの重要な要素は”自律神経”にあります。
自律神経と骨格の関係性は上記で説明致しましたので、ここでは矯正により自律神経の機能が向上し耐性が向上した結果、慢性的な腰痛を克服した方の症例をご紹介します。
現在58歳の男性の患者様で当院には8年矯正に見えている方がいらっしゃいます。この方は40代前半から年に数回ひどいギックリ腰をおこし、初診時もギックリ腰にためにご紹介で来院されました。仕事が非常に忙しく、普段から睡眠時間の確保が難しいために、疲れが溜まってくると必ずギックリ腰をおこしていたそうです。
来院から3年目くらいまではギックリ腰をおこしたり、危険性が高まってきた時に矯正していました。次第にギックリ腰からの回復も速くなり、頻度も低下してきましたが、定年が近くなり腰の状態に不安があるために、引退後の生活のために週1回矯正を行うことにしました。
こちらの方は
継続的な矯正による身体の質の向上についてのページでも触れているように、体質的な骨の柔軟性に乏しく関節の柔軟性もあまり高くありませんでした。加えて慢性的な疲労のために耐性は非常に低いものであったので、疲労の蓄積によりギックリ腰をおこしやすかったと考えられます。
睡眠時間を出来るだけ確保する努力をして頂き、矯正を継続していきました。現在は関節の柔軟性は増加し、身体の歪みはほぼ見られず、日々の矯正は内臓や頭蓋骨が主になり、耐性は向上している傾向に見られます。当初は身長176センチで体重78キロでしたが現在は70キロを切るか切らないかという体重になったそうですが、特にダイエットをしたわけではなく、睡眠時間を増やして生活リズムを安定させたことと、矯正により自律神経の安定が図られたことにより、代謝が向上したためと考えられます。矯正を継続してからはギックリ腰は1回ありましたが、回復するのにさほど時間は要しませんでした。
記憶に新しいと思いますが、2014年2月8日と14日に2週連続で東京都は45年振りの大雪に見舞われました。皆様も雪かきに忙しく身体のあちこちが痛くなった方も多くいらっしゃると思います。
こちらの患者様は自宅、ご実家、ご両親が管理されているアパートの雪かきをなさいました。ご本人様のお話によると、2月8日土曜日と9日の日曜日は6時間ずつ自宅と高齢のご両親がお住まいのご実家の雪かきをして(ご実家はとても広いです)平日もなるべく早く帰宅してアパートの雪かきをしていたそうです。14日金曜日から土曜日と日曜日も同じように長時間の雪かきをせざるを得ない状況でありました。
当然、腰への負担を考慮して、1日6時間の雪かきも休憩を多くはさみながらであったそうですが、、この期間に腰にダメージを受けることは皆無であったそうです。2月18日に来院された時も、過酷な雪かきのあとにもかかわらず、身体の状態としては安定した状態でした。
このように、こちらの患者様は長年の悩みであったギックリ腰になりやすい体質というものを克服することができ、先日の大雪の際にも、むしろ普段腰に問題を抱えていない方以上の負荷がかかっても安定性を崩すことのない耐性を確保することができています。これは疲労の蓄積を最小限にするために生活リズムを変える努力をされたことと、矯正により骨格と自律神経の安定性を高め、長年の弱点であった疲労に対する耐性を高め、体質的な改善ができた結果であると考えています。
・利き目、利き手、利き足の連動
今から13〜14年前に矯正しても中々バランスの取りづらい患者様がいました。この患者様の症状は慢性的な腰痛であり、症状はある程度安定してきても、からだの右への傾きが常に残り非常に難航していました。ある日この患者様との会話の中で、「母と私で雑巾を絞る向きが違う」ということを伺い、これは何かあるのではないかと思いました。幸いお母様も定期的に来院されていたために、お二人のからだのバランスを比較することができました。お二人は親子であるために、身体のゆがみ方も一見同じような感じでしたが、娘さんのほうが癖があるというか、複雑な感じが漠然とありました。お二人は共に手は右利きでありましたが、利き目を調べてみると娘さんは左が利き目であり、お母様のお話では「確か小さい頃スプーンを左手で持っていたから右手に治した気がする」とおっしゃっていました。
これは、娘さんは本来左利きであったのに、右利きとして生活をしたために複雑さが産まれたのではないかとう仮説に至りました。利き足についてはこの患者様はスポーツの経験が無く、利き足を意識する機会がなかったために、ご本人様には「どちらが利き足」という意識はあまりないそうですが、無意識に片足で立って頂いたり、「仮に100m走をする場合、スタートの時にどのように構えるか」と質問して実際に構えて頂いたところ、恐らく利き足は左であると思われました。
この他にも、複雑なゆがみをお持ちの患者様には自覚のある左利きの方が多い、または自覚としては右利きであるが利き目が左である方が多いなど、優位な目、手、足の一致と不一致とからだのゆがみの関係性が示唆される事例が多く見られました。
その後、私が所属するパシフィックアジアカイロプラクティック協会(PAAC)の先輩である吉岡一貴先生の「仙腸関節ー動きの解析と歪みのメカニズムに関する考察」、英国のジョナサンホワット先生の「頭蓋筋膜の捻じれの臨床的矯正」等の論文から多大なヒントを頂き、臨床的に大変参考にさせて頂きました。
利き目、利き手、利き足には大脳半球の優位性が大きく影響していると考えられます。国内の研究機関の発表でも、大脳半球の発生時期の差と、優位脳と利き手の因果関係が報告されており、ジョナサンホワット先生によると、胎児期の環境と出産過程による頭蓋骨の捻転により、優位脳が決定されると述べておられます。当院の患者様でご主人様が利き目が左目で利き手が左手、奥様が利き目が左目で利き手が右手、お子様が二人とも利き手が左手(長男さんは幼少期に右手に矯正)、ご主人様のお母様が利き手が左手というご家族がいらっしゃいます。これは大脳の優位性に遺伝要素が影響している事を示唆していると考えられます。
1の胎児期の状態と出産過程によるものでも触れましたが、胎児は頭蓋骨を圧迫され、捻じりながら、つまり多かれ少なかれ歪みながら産まれてきます。このゆがみ方もバランス良くゆがむか、バランス悪くゆがむかという違いがあります。1の項で触れた出産過程は我々の見解の中では、円滑なバランスのゆがみ方と捉えています。
この状態では、頭蓋骨のゆがみと大脳半球の大きさから優位脳が左、利き目が右となり恐らく利き手、利き足とも右になると予測され、様々な動作をする際に左足を軸足とすることで、全身の力の伝達が円滑に行われるために、からだのゆがみが発生する際にも、捻じれとしても円滑な捻じれとなると思われます。このケースにおいては矯正を行う際に、ある1か所を矯正すると、その矯正力が円滑に全身に伝達されるために、複数個所に矯正の影響力が及び、回復が比較的スムースであると考えられます。
円滑でないバランスのゆがみ方の場合、優位脳、利き目、利き手、利き足がどの様に発生するかが定かではないために複雑な身体のバランスが発生すると考えられます。従って様々な動作をする際に全身の力の伝達が円滑に行われないために、からだのゆがみが発生する際にも、捻じれとしても円滑でない複雑な捻じれになると思われます。このケースにおいては矯正を行う際に、ある1か所を矯正しても、その矯正力が円滑に全身に伝達されないために、どのように矯正したら限りなく円滑なバランスに近づくかを逐一検査しながら矯正を行うと、時間はかかりますが安定感を維持することが出来ると思われます。
現在28歳の患者様で、21歳の時に椎間板ヘルニアの手術をされた方がいらっしゃいます。こちらの患者様は手術後も手術前ほどではありませんが、慢性的に腰痛に悩まされていました。趣味でテニスをされていますが、ご本人様の言う事には「常にバランスが悪い気がする」とおっしゃっていました。利き目、利き手は左であり、小学生の時にやっていたサッカーでも左足でしかボールが蹴れなかったそうですが、当院で検査のために姿勢を分析すると、著しい左荷重であり、利き足も軸足も左足という状態であり、「いつも左足に体重が乗っている」という自覚をお持ちでした。頭蓋骨の状態から判断すると、利き目は左目である可能性が高く、実際の利き目も左目でありましたが複雑なゆがみを持っている事が示唆される状態でした。
こちらの患者様は、恐らく様々な動作の際に、右足を軸足として使用した方が動作としては円滑に行われると思われるゆがみを持っていますが、脳や筋骨格のバランスから左足に体重が乗りやすいために、円滑でない力の伝達をしなければならないので、若くして椎間板に過剰な負荷が掛かり続け、ヘルニアを発症したものと考えられます。
左荷重が著しい状態では、からだの柔軟性が低く、全身の筋力も弱い部分が目立ちましたが、矯正を重ね、荷重がニュートラルまたは若干右というバランスに変化してくると、柔軟性と筋力は劇的に改善し、ご本人様も右足を軸足として意識することで、テニスの際のバランスの安定性と腰痛の改善に繋がったとおっしゃっていました。
利き目、利き手、利き足の連動には、今お話した以外にも様々な特徴を見出すことが出来ますが、円滑なゆがみ方でもその程度が過ぎれば弱点になりますし、円滑でないゆがみ方であれば、それは皆様の弱点の中でも大きな弱点となることを示唆していると考えられます。
どのような矯正するのか?
当院に来院されている患者様が新患様を紹介して下さる場合でも、「どのようなことをするのか」という御家族、御友人の問に対して、「・・・???」と返答に困ってしまい、上の項では「弱点を矯正する」と述べましたが、それでも「???」と返答に困ってしまいそうであると思います。
この項では、弱点の矯正とは身体の何処を矯正するのか?ということについて、出来るだけ専門用語を使わずにご説明したいと思います。
さて、身体の弱点を矯正する場合に重要な要素となるのが皆様の身体の歪みの傾向を分析することにあります。歪みを発生させる主要な要因として出産過程、疲労、利き目や利き手などの優位脳ということを上記で説明しましたが、これらを分析することで皆様の歪みの傾向がわかり、その歪みの傾向に現時点で大きく関与している部分が矯正対象となります。
歪みの傾向の検査
上記は歪みの傾向の検査ですが、このほかにも複数の検査をして歪みの傾向を判断します。この傾向により、同じ様な症状をお持ちの方でも矯正方法が全く違ってきますので非常に重要となります。
この矯正対象となる部分は皆様の症状の発生に関与する部分ではありますが、必ずしも発症部位でない可能性があります。我々の矯正が根本的な解決を目指す方法であることの所以です。
矯正の進め方としては、初診からしばらくの間は身体の歪みの傾向を安定させる矯正を行っていくことが多いと思います。この期間には筋肉、内臓、自律神経、骨盤の全体的な歪み、頭蓋骨、手足の矯正を行います。身体の歪みの傾向が安定すると、耐性をより高め体質改善をするために、関節、頭蓋骨、内臓、自律神経、の矯正が主となります。
・骨盤、脊柱の矯正
骨盤矯正という言葉は一般的になってきましたが、我々が行う骨盤矯正は大きく分けて2つの意味合いがあります。1つは骨盤全体を1つのユニットとして安定させる方法であり、もう1つは骨盤を構成する関節を適正な状態に再配列させる方法です。
前者は主に筋肉のバランスを安定させることで症状の改善と耐性の向上を行い、後者は身体の状態の安定と骨格的な体質の改善を目的とします。どちらが皆様に対して適切であるかは皆様の身体の状態により異なります。
左下の画像は頸椎の矯正ですが、身体のバランスの安定にとって頸椎はとても重要になります。大げさな表現をすると、背骨の使命は頭を水平に保つことと言えると考えています。ギックリ腰を起こして腰が左右に歪んでしまっても、頭の位置は可能な限りの水平位を保っている場合が多くみられます。これは小脳や平行感覚に関連する器官が、腰が歪んでいても背骨を総動員して頭が水平になるように懸命に補正しているようにも見えます。
そのために頸椎の上部には頭の位置を安定させる筋肉が数多く付着し、その結果歪みを強く生じる場所でもあります。胎児期の状態と出産過程によるものの項でも触れましたが、新生児の状態でも頸椎に過剰な負荷がかかっています。当院に来院しているお子様の多くにもみられますが、姿勢は比較的真っ直ぐであっても頸椎に強い歪みを持っているお子様が多いのもこのためであると考えられます。
また身体の成長と共に骨盤に歪みが生じると、そのために頸椎は代償性の歪みを生じます。このために年齢に関係なく、頸椎の安定性と全身の歪みの関係性に着目することは大変重要になります。
頸椎の矯正 骨盤の矯正
・自律神経 内臓の矯正
次に矯正の対象となるのは「内臓」です。当院で行う矯正の考え方は、1920年代に我々の偉大な先人が心臓疾患を持つ人に対し、背骨に刺激を与えることによりその疾患を抑制できたことが始まりとなります。
自律神経は皆様の身体をコントロールする神経であり、骨格に現れる様々な症状や体調の不調は自律神経のアンバランスが原因となっているケースがとても多く見られます。自律神経は背骨と背骨の間から目的器官との情報の伝達を行っていますので、背骨が捻じれる、動きが悪くなる、動き過ぎてしまうといった状態は、自律神経に対する圧力変動を生じ、機能的な役割が低下して、病気や構造的な問題に発展していきます。従って自律神経の状態により様々な方法で背骨を矯正することが、自律神経の安定性に繋がります。
また、内臓に直接アプローチ方法もあります。これは下の画像のように臓器に対して刺激を加え、機能の活性化や内臓の配置に対して矯正を行います。我々が皆様のお腹を触ると普段は気づかない違和感や圧痛などを感じる箇所がある場合があります。これは特定の臓器が疲労していたり血液が滞っている時に起きる現象です。矯正により渡ら記が活性化して血流が安定すると、違和感や圧痛は減少しなくなってくる傾向にあります。
肝臓の矯正 胃の矯正
・足、腕、手の矯正
さて、骨盤や背骨のゆがみは足や肩、腕のゆがみを連鎖的に生み出しますが、足や肩、腕のゆがみが骨盤や背骨のゆがみを生み出すこともあります。膝を痛めたり、足首を捻挫した経験がある方はお解りになると思いますが、痛む所を庇うためにからだを捻じって歩いたりすると思います。足の付け根である股関節や腕の付け根である肩関節は、からだの中でとても可動性の大きな所であるかわりに、からだ全体を大きく歪ませる所でもあります。特に股関節は、二足歩行である我々にとって、あらゆる動作の軸となる部分であると考えられます。
私事ですが、学生時代にサッカーをやってまして、「右利きなのに体重が常に乗っている軸足も右」という非常にバランスの悪いからだをしていました。その為か股関節と膝に常に痛みを持ち、足首の捻挫は数え切れない程やりました。その結果、20歳過ぎから坐骨神経痛とぎっくり腰を繰り返し、暫く運動からは遠ざかっていました。現在は信頼のおける先生に矯正して頂いており、極端な右荷重と慢性的な腰痛も改善され、趣味としてジョギングを楽しんでいます。股関節のバランスが変化したことと、自身でも左足を軸に右足で進むという意識で練習した結果、全く怪我も無く、中年の市民ランナーレベルですがタイムも飛躍的に向上しました。
手足のバランスの崩れはからだ全体から見ると思わぬ伏兵と思われがちですが、実は手足の矯正なくして全身のバランスを取ることは不可能であるほど重要であると考えられます。右下の画像は肩の鎖骨の矯正になります。個人的な見解ではこの鎖骨という骨は特に重要であり、身体の中心にある胸骨との関節である胸鎖関節というところは、首や肩、腕の症状において必ず安定性の確保が必要になる、上半身の舵取りの役割を果たしています。
股関節の矯正 肩の矯正
・頭蓋骨の矯正
我々の矯正の中で特徴的なものとして頭蓋骨の矯正があります。頭蓋骨の矯正と言うと、とても仰々しい感じがするかも知れませんが、当院では日常的に行う矯正の1つであり、皆様のからだにとっても多大な利益を得るものであると考えています。
頭蓋骨は20個以上の骨の連結により成り立ち、それぞれの連結には僅かながらも可動性があります。頭蓋骨は髄膜という3層の膜を通じて脳と繋がっていて、脳の働きや血流の安定に大きく関与します。
頭蓋骨矯正は、主にその繋ぎ目の極僅かな可動性を改善し、脳から全身への命令を安定化させるもの、脳への血液供給を安定させるもの、全身の機能を活性化させるもの、頭蓋骨の繋ぎ目をバランスさせるものなどがあり、皆様の状態に応じて様々な矯正が可能であります。
骨格のゆがみが頭蓋骨に与える影響の1例をご紹介します。30代後半の患者様で強い腰痛と左足の痺れと痛みを持つ方がいました。こちらの患者様は頭蓋骨のてっぺんの矢状縫合という繋ぎ目にも強い圧痛がありました。矢状縫合という所は頭頂骨という2つの骨の繋ぎ目であり、その内側には上矢状静脈洞という大きな静脈血の通路があり、さらに奥には大脳の足の運動と感覚の中枢があります。
矢状縫合
上の画像は頭蓋骨を上から見た図であり、画像上部がおでこになります。指で示されたギザギザの所が矢状縫合という左右の頭頂骨の繋ぎ目です。
こちらの患者様は、内臓、腰椎、足の矯正を行うと矢状縫合の圧痛は次第に減少していき、治療の経過と共に矢状縫合を緩める矯正を行うと、腰痛と左足の痺れと痛み減少していきました。これは腰痛を起こしていた腰のアンバランスが頭蓋骨のバランスにも影響していること、また頭蓋骨を矯正することで、脳の血流の促進と足の運動神経と感覚神経を安定させている事を示唆しています。
人間を2本足で立っている建築物と考えると、からだの土台である腰のゆがみは、胸部、頚部と次第にゆがみの連鎖を起こし、最上部の頭蓋骨に最終的なゆがみを発生させると考えられます。最上部のゆがんだ頭蓋骨は脳のバランスを崩し、その支配領域である箇所へのコントロールを失ってしまい、症状の悪循環が発生すると考えられます。
上記の例以外にも頭蓋骨のゆがみを発生させる要因は沢山ありますが、アンバランスな頭蓋骨は脳の機能を低下させるために、皆様のお持ちの症状の改善の有効な手段となり得ます。
頭蓋骨の矯正はゆがみを起こし、脳の機能が低下したものに対して、その機能を向上させ、神経と血流等を改善させることが主な目的のため、著しく変形した大人の頭蓋骨の形を改善させることが目的でないことをご了承下さい。
頭蓋骨の矯正
カイロプラクティックの話
カイロプラクティックに関する色々な話です。
患者様との会話の中で、カイロプラクティックについて皆様から様々なご質問を頂きます。その中で実際に私が検証した事などを掲載しています。一般的なカイロプラクティックの解説には登場しないような内容ですので、お気軽にお楽しみ下さい!
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カイロプラクターは自分自身を矯正できるのか?
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頭蓋骨矯正で頭の形は良くなるのか?
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カイロプラクティックは内臓に効果的であるのか?
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頭蓋骨矯正は症状の改善にどのような効果があるのか?
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健康とはなにか?
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カイロプラクティックでスポーツのパフォーマンスは向上するのか?
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カイロプラクティックで生命力は向上するのか?