カイロプラクティックで生命力は向上するのか?
カイロプラクティックで生命力は向上するのかという魅力的なタイトルです。今回の題目はカイロプラクティックの矯正を受ければ誰でも飛躍的に寿命が延びるという怪しげなものではなく、限られた寿命の中でどれだけ健康的に天寿を全うできるかという報告です。
さて、今回の被験者は「ウサギ」です。
事の発端は、私が2003年に結婚した時に、妻が嫁入り道具の1つとして実家で飼っていたウサギを連れてきた事でした。そのウサギは名前を「ツブ」と言って1998年暮れ産まれの雄です。ツブを矯正しようと思ったきっかけは、常に首を左に傾げていて、首が曲がったままであったからです。義父義母義姉と妻の証言によれば、産まれたての時は首を傾げてはおらず、いつの間にか曲がってしまったとの事でしたので、産まれながらの変形でなければ治るのではないかと考えたためでした。
ツブは当初ケージの中で飼っていました。矯正しようとケージの中に手を入れると、眼球が突出して明らかに心拍数が上がり、異常な緊張状態に陥りました。生活環境が変わった上に何かをされようとしているのですから当然の反応です。そこで矯正に着手する前に、ツブが私に慣れて落ち着いた環境で過ごせるように生活環境を整えました。幸い我が家には、陽当たりの良い廊下があるのでそこでツブを放し飼いで飼育することにしました。
廊下で放し飼いにした結果、ツブは環境に次第に慣れ始めて廊下にごろごろ寝転びながらリラックスして暮らし始め、次第に身体を触っても全く怖がらなくなってきたので矯正を開始しました。
さて、ウサギを矯正しようにもウサギの骨格がどのようになっているかを知らなければいけません。しかし現在のネット社会はとても便利なものでウサギのレントゲン写真を始め、ウサギの骨格に関する様々な情報が容易に入手することができました。目的はツブの曲がった首を矯正することでしたし、上部頸椎を矯正するカイロプラクティックのスタイルに興味があったので、当面は頸椎のみを矯正することにしました。
ウサギの上部頸椎は輪のような形状をしていて、頭蓋骨との接続部分は人間とは異なり頸椎の上に頭蓋骨が乗っているというより、頸椎の連続上に頭蓋骨が繋がっているといった印象でした。矯正方法は試行錯誤しましたが、頭蓋骨を前方に牽引しながら上部頸椎を矯正するという手法を取りました。
ツブの上部頸椎は首を左へ傾げているのと同様に、左側が後方右側が前方(あるいは左側が上方右側が下方)という状態でした。頭蓋骨の付け根を前方に牽引しながら上部頸椎を矯正方向に拇指と中指を使い回転させていきます。ツブは抵抗することも怖がることもなくおとなしくしています。妻の実家にはツブと兄弟であると思われるマメというウサギがいるのですが、義母がマメの頭を撫でているとウットリとした表情で目をつぶっておとなしくしていたので、ツブも同様の反応を示してくれたので助かりました。
その後は廊下でツブの姿を見る度に矯正していました。矯正を続けているとツブの行動範囲にも変化が見られ、廊下と隣接する寝室に入りベッドの下に潜り込んで遊んだり、ベッドの上に飛び乗ってみたりのびのびと暮らしていました。こうしているうちに記憶が曖昧ですが2か月後には首を傾げる事はなくなりました。
当初の目的は達成できたので、今後はツブの健康管理のために矯正を継続することにしました。最初は上部頸椎のみを矯正していましたが、今後は骨盤、背骨も矯正対象にすることにしました。
ツブの健康状態は良好でしたが、2004年中頃に目から涙を流し、食事をあまり摂らなくなってしまいました。動物病院に何軒か連れて行ったのですが、原因は解らず状態が変化することはありませんでした。インターネットでウサギにを診てもらえる動物病院を探していたら、武蔵野市の動物病院を見つけたので早速連れて行きました。
すると担当の先生と院長先生はウサギの臨床例がとても豊富のようで、ツブの状態を診ると歯に問題があると教えてくれて、レントゲンを撮るとツブの奥歯が曲がって伸びていて頬っぺたに刺さっていることが解りました。ウサギは一生歯が伸び続けるために、ものを齧ることで歯が適切に削られるとの事ですが、中にはツブのように何らかの原因で歯が曲がって伸びてしまうケースも多いようで、歯を削る手術をすることによって涙と食欲は回復してくるだろうとのことでした。
手術の結果、入院の4日間を含めツブの状態は見事に回復しました。しかし、ツブのようなケースでは別の歯も曲がって伸びる可能性があるとのことでした。担当の先生がおっしゃった通り、ツブはその後10回近く手術を受けることになりました。
さてミニウサギの寿命とはどれくらいのものであるのかをインターネットで調べてみると、5〜10年、7〜8年などと様々でしたが、総じてみると10年を超えると長寿の部類に入るそうです。信頼できる動物病院も見つかったので、今後はツブの長寿のために矯正を続けることにしました。
その後は歯の問題以外は健康状態が良好な時期が長く続きました。しかし歯の問題には閉口しました。1年くらい問題が起こらなかったかと思うと、手術を行ってから2か月後くらいにはまた歯が曲がって伸びてしまうこともありました。前回は右側で今回は左側なんて事は日常茶飯事でした。
動物の医療費は高額です。我が家の家計にも、こう頻繁に手術を行うとかなり響いてきます。そこでそれとなく先生に相談すると、手術をしない訳には行かないけれど、家でツブの手術後のフォローを頑張れるなら入院はさせなくて済むと教えてもらいました。
今まで手術後は、流動食と投薬をして完全に普通食が食べられるようになってから退院していましたが、流動食のレシビを教えてもらい、食べさせ方のコツや投薬のコツを教えてもらい、今後は手術後即退院という体勢が整い、家計への圧迫は大幅に軽減されました。
ウサギはタオルでグルグル巻きにすると落ち着くようで、また動きも制御されるために、動物病院ではこの体勢で、注射器の先にゴム管をつけて流動食や投薬を行っていました。我が家でもこの方法を採用し流動食と投薬を行いましたが、この方法はテーブルの上にツブを乗せて行うために、流動食を与えている最中(およそ10分)は中腰の状態を維持しなければなりません。これは当時坐骨神経痛に悩まされていた私にとっては耐え難いものでした。
しかしここで、長年築き上げてきたツブとの信頼関係が功を奏しました。ツブはどのような体勢にしても私が抱っこして暴れることはありません。私があぐらをかいて坐り、ツブを仰向けにして足の上に乗せてもおとなしくしているので、その姿勢で容易に流動食を与えることに成功しました。
そのような中、妻の実家にいる兄弟ウサギのマメが2007年に亡くなりました。マメもツブと同様に歯が曲がって伸びてしまうことはありましたが、特に病気をすることなく元気に過ごしていましたが、突然体調を崩してしまいました。
ツブは相変わらず元気でしたが、次第に老けた印象になってきました。ウサギはパブリックイメージとして勢いのある生き物の象徴のように言われることがありますが、顔つきは瞼が下がりはじめておじいちゃんの顔になり、食事の量が減ってきたために2.7キロほどあった体重は徐々に2.1キロまで減り、動きにも機敏さがなくなってきました。しかし動物病院の先生によると、ツブは年齢のわりには心臓がしっかりしているとのことでした。
2010年4月29日に事態が急変しました。ツブの矯正をしようと思い近づくと、坐った姿勢のまま動こうとせずに、じっとしていました。おしりを押して動かそうとすると右の前足を床に着かずに移動をしていました。様子がおかしいので動物病院に連れて行ってみると右の前足を骨折していました。ツブの生活空間には基本的には段差がないので、先生によると老化により何かしらの負荷によって骨折してしまったのではないかとのことでした。ウサギは動くスピードが速いこととと引き換えに、骨がとても軽いそうで骨折の危険性は常にあるそうです。
暫く入院させていましたが、動物病院から電話がきて、今度は左の後ろ足の骨折も起こしてしまいました。結果としてはその後に右の後ろ足も骨折してしまい、先生のお話ですと体重に骨が耐えられなくなってきているようでした。
先生と相談した結果、退院して家で看護と投薬を行う事にしました。3本の足が折れているので寝たままですが、流動食を食べる元気がありましたが次第に食欲も低下してきました。やはり動けなくなると急激に衰えが進むようです。
そしてついに5月21日ツブは亡くなりました。12歳と6か月でした。
さて題目にあるように、カイロプラクティックで生命力は向上するのかということですが、ツブの場合はミニウサギの平均寿命と比較してかなり長寿であり、その間に歯の問題以外病気をしませんでした。お世話になった動物病院でもミニウサギの患者としては12年6か月は最長寿記録であったそうです。また兄弟ウサギのマメと比較して3年ほど長生きしていましたので、日頃のカイロプラクティックの矯正の成果であると考えられる部分も大きいと思います。
ツブは老衰で亡くなりましたが、足を3本骨折するという身体の限界値まで生きていて最後は見ていて可愛そうでもありましたが、限られた寿命の中でどれだけ健康的に天寿を全うするかという点においては立派であったと考えております。
尚、当院では動物に対する矯正は行っておりませんのでご了承下さい。