カイロプラクティックと膝の痛み
カイロプラクティックによる膝の痛みの改善例をご紹介します。膝の痛みには、膝蓋骨(膝のお皿の骨)、半月板(軟骨)そして十字靭帯や側副靭帯など膝の安定性を確保する構造の障害から、腰椎、骨盤のゆがみから発生するものなど、原因としては多岐に渡ります。
症例1 70代 女性
以前から長距離を歩くと右の膝に痛みが発生していたとのことですが、ここ2週間くらいで右膝を伸ばす動作が痛みのために困難になり、歩行時はなるべく右膝に負担をかけないように、不自然な姿勢で歩くようになり、次第に腰痛も発生してきたために来院されました。
立位の姿勢では、痛む右膝を庇うために左に傾斜した姿勢になり、椅子に座って膝の曲げ伸ばしをして頂くと、曲げるのにも痛みは発生しますが、伸ばすことでとても強い痛みが発生する状態でした。また、仰向けで寝て頂くと、右足は膝をテニスボール1個分の高さほど曲げた状態でしか寝ることができませんでした。右膝の膝蓋骨は左と比較すると上下方向への動きが著しく減少し、左右の太ももの前側の筋肉は、右の方がかなり緊張の強い状態でした。胆嚢を手術で摘出してあるせいか、横隔膜から骨盤にかけての腹部は右側の緊張が強く見られました。
初回は肝臓、腰椎、膝の矯正を行いました。うつ伏せで片側づつ膝を曲げてみると、左足を曲げた時はスムーズに曲がりますが、右足を曲げると曲げ始めてすぐに、骨盤が大きく左側に回転していきます。この現象は、腰椎や骨盤、腰を支える筋肉、股関節と太ももの筋肉に問題があることを示唆します。この現象の改善の程度は、腰椎、骨盤、膝の状態の改善の指針になると思われます。腰椎の矯正を行っている最中はこの現象の程度は少なくなり、膝を曲げても痛みはほとんど出ませんでした。再度仰向けになって頂くと、膝を曲げる動作は痛みなく行えましたが、伸ばす動作では痛みが発生します。腰椎の右側の筋肉を矯正した後、膝蓋骨の矯正を行いました。最初に確認したときよりも膝蓋骨の下方向への動きは改善されていましたが、上方向への動きはありませんでしたので、その方向へ持続的な矯正を行いました。また、膝関節を構成する脛骨の矯正をおこないました。徐々に膝を伸ばす事はできるようになり、この日はテニスボール半分くらいの高さまで伸ばすことができました。ご本人様は「もう少しで膝の裏が布団につきそう」とおっしゃっていました。
2回目は2日後に行いました。歩行時の膝の痛みは半分くらいで腰痛もあまり感じない状態になっていました。膝は曲げるのは苦痛ではなくなり、伸ばす動作に痛みは発生しますが前回よりもスムーズであるとのことでした。仰向けでの膝の状態は何とか真っ直ぐ伸ばして寝られる状態でした。この日は肝臓、横隔膜、腰椎、股関節、膝の矯正を行いました。うつ伏せでの膝を曲げる動作での骨盤の回転は、膝の可動性が増加した影響か前回よりも程度は軽減していますが、やはり左方向への回転は発生します。腰椎の矯正中は左方向への回転は見られず、股関節の矯正により回転の程度は前回の8割減になってきました。仰向けで膝を伸ばしてみると、膝の裏はベッドにつく状態でした。
経過としては、胆嚢を切除したことによると思われる上半身のゆがみがなくなってくると、うつ伏せでの骨盤の回転もほぼ見られなくなり、5回目の矯正のときには膝の曲げ伸ばしによる痛み、歩行による痛みはほぼなくなりました。しかし、外出して1日中歩いたりすると、日によって右膝に痛みが出ることもあるために、現在は予防のため2週間に1度矯正を行っています。
こちらの患者様は腰椎と骨盤のバランスの崩れによって、股関節とその周辺の筋肉に強い緊張が発生し、長年のその積み重ねが膝に症状を発生させた2次的なものであると考えられます。
症例2 10代 男性
都内でも強豪と呼ばれるサッカー部に所属している高校生ですが、入学後すぐに左膝に痛みが発生し、何とか練習は続けていましたが、夏休み後から次第に左膝が腫れるようになり走ることができなくなってしまったために、お母様のご紹介で来院しました。
状態は、整形外科で診てもらったところ、半月板の損傷とのことであり、左膝の内側の半月板を中心に広範囲に腫れが見られます。現状では、膝を曲げることも伸ばすことも苦痛であり、歩行時は左足をひきずって歩く状態です。ご本人様によると、このまま練習を続けても悪化する一方であると思い、監督さんとも相談して、しばらくは練習を休み、膝に負担のかからないトレーニングだけを行うことにしたそうです。
初回は膝の炎症が強い状態であったために、それを考慮し、先ずは様々な検査を行いました。立位での姿勢は右側に傾斜し、屈伸運動は困難であり、足の筋力は左足が著しく弱化していました。仰向けでの膝の曲げ伸ばしは、痛みが発生しますが何とかできる状態でしたが、うつ伏せで膝を曲げるのはとても苦痛であるとのことであり、45度程曲げると痛みが憎悪しました。椅子に座って膝の曲げ伸ばしをして頂くと、内側の半月板を内後方に押さえた状態だと、比較的苦痛が少なく曲げ伸ばしをすることができ、立位でも同様の状態であれば、左足に体重がかかってもあまり痛みは発生しないとのことでした。膝蓋骨の可動性は十分ありましたが、側副靭帯の安定性は弱化がみられました。矯正は腎臓、腰椎、股関節、膝を行いました。腰椎と股関節の矯正を行うと、うつ伏せでの膝を曲げる角度は90度くらいまで可能になりました。
2回目は4日後に行いました。練習を休んでいるために左膝の炎症による腫れはだいぶ引いていました。膝の曲げ伸ばしは前回と比較すると楽にできるようになっていましたが、荷重状態での屈伸運動、立ちあがったり、歩きはじめたりと動きの初動の動作に痛みを強く感じるとのことでした。左膝の内側の半月板と内側側副靭帯と後方の膝窩筋の部分に強い圧痛がありました。この日は腎臓、腰椎、股関節、半月板の矯正を行いました。座位でご自身で膝の曲げ伸ばしをして頂いて痛みの発生する角度を確認した後に、その角度での痛みが緩和する方向に半月板の位置を調整しながら矯正を行います。前回に調べたのと同様に、内後方の方向に矯正しながら膝を動かすと、痛みの出る角度に変化が現れるのでその方向へ座位と仰向けで矯正を行います。内側と外側の側副靭帯のバランスを矯正してから、両拇指で半月板を押さえ、膝に牽引を加えながら、反時計周りに膝を回転させながら矯正します。矯正後は荷重状態での屈伸運動は比較的容易に行うことができました。
3回目以降は腰椎と股関節の矯正を中心に行いました。こちらの患者様はまだ当時15歳でしたが中学生の時から激しい練習のために腰痛に悩まされていたそうです。実際にトレーニングによって身体能力は向上していますが、年齢のわりに腰椎と股関節の固着が強く、からだの体質的な柔軟性に欠けるために怪我をしやすい状態にあると思われます。週1回の矯正を行い、1か月ほどで膝の腫れ、動作による痛み、各部の圧痛、筋力が回復してきましたので、矯正と並行して、ストレッチ、筋力トレーニング、軽いランニング、スイムを行うことになりました。
経過としては2か月目までは軽いトレーニングで多少膝の痛みや若干の腫れが出ていましたが、2か月を過ぎた時点からは急激に状態は改善され、あらゆる動きと持続的な運動によって痛みや腫れがでることはありませんでした。この時点で監督さんと相談した結果、本格的に練習に復帰するのは大事を取って1か月後からにすることに決定し、その期間は当院での矯正、部活のトレーナーの先生の指導の下で膝に負荷を徐々にかけるトレーニングと持久力の回復に努めることになりました。
3か月目で練習に復帰しましたが、その期間矯正とリハビリを熱心に続けたために、膝の不安は全くなく、パフォーマンスも以前より格段に向上したそうです。ご本人様ほ「不安だったけど、思い切って練習を休んで本当に良かった」とおっしゃっていました。
こちらの患者さまのように競技スポーツを行う方は、からだに強い負荷をかけたトレーニングを行うために、身体能力は向上しますが、酷使した分、からだには強いダメージが残ります。こちらの患者様はそれが年齢以上に固着の強いからだとなって現れていました。これは所謂老化です。体質的に固着の強いからだで過度なトレーニングをすれば、どうしても怪我に繋がります。スポーツをされる方は怪我により、トレーニングを中断することでパフォーマンスが低下してしまうことを、どうしても気にしてしまい、無理をしてトレーニングを行う傾向にありますが、トレーニングを中断し休息を十分に取り、怪我の場所と体質的な部分の矯正を行うと、結果としてパフォーマンスの向上への近道になると考えられます。